大きな犬の背中に顔を埋めて、声を出さずに気づかれないように少しだけ泣いた。媚びず頼らず生きていきたい。猫だもの。寂しく不安で泣いたなんて小娘でもあるまいし、犬に悟られてはならぬ。犬がいびきを立てて眠ったのを確認してから、猫はなんども犬に顔を近づけて美しい寝顔に見とれ続ける。犬は激務なのであろう。すきあらば、どこでもいつでも寝る。これは一瞬の才能だ。

犬に会うといつも元気になる。猫も今、ハイパー忙しいけれど犬はもっとタイトスケジュール。猫とのたわいもないじゃれあいの為に時間を作ってくれるのが実はとても嬉しい。猫は体力もなく、犬と会う約束の時間のころには、卒倒しそうに疲れている。犬はもっと疲れていると思う。でも頑張って会う。

ワガママを言うのが下手な猫だけど犬には行きたいレストランをリクエストする。猫は親にですら気を遣って意思表示なかなかしないのにね。唯一のワガママが言える相手だ。

犬の存在がとても大事で犬と一緒に時間を過ごすのは楽しい。

犬といる時は時間よ止まれ。何度も心の中で繰り返す。

大切な人は大切にできる時が終わるまで礼節を持って、尊敬の念をいだきながら大切にしようと思う。別れ際。またね。と挨拶するけれど、永遠の別れかもしれない。

犬と猫は離れて暮らす子供と親みたいな関係だな。犬が寝てるすきに、離れるのが寂しくて鼻をグズグズさせてしまうけど犬が起きてる時にはサバサバっと別れる。

犬の家の飼い猫になりたいな。

頑張らなくても、犬が家に帰ってきたら犬に会える。犬の匂いを嗅ぎに犬の身体に寄り添うことができる。

猫になりたい。